第27回 ExCELLSセミナーを開催いたします。
※本セミナーは日本語で実施されます。Seminar Language: Japanese
日時
2023年3月14日(火) 16:00〜17:00
開催形式
ハイブリッド
【会場】山手3号館 2F 大会議室
【配信】Zoom ※所内メールでURLをお知らせします
演者
戸島 拓郎 博士
(理化学研究所 光量子工学研究センター 上級研究員)
題目
高速超解像顕微鏡によるゴルジ体の時空間動態解析
要旨
ゴルジ体は、膜/分泌タンパク質の翻訳後修飾や選別輸送を担う重要な膜交通のキーステーションである。ゴルジ体は複数の槽(シス、メディアル、トランス、トランスゴルジ網)から構成されており、小胞体で新規合成された積荷タンパク質は、シス槽から取り込まれた後、メディアル槽、トランス槽を経由し、最終的にトランスゴルジ網からそれぞれの目的地へ向けて選別配送される。このゴルジ内積荷移動のメカニズムとして、槽が積荷を保持したまま徐々にその性質をシスからトランスへと変えてゆく「槽成熟」と呼ばれる機構が観察されているが、成熟してゆく単一の槽内において、積荷の受取り、糖鎖修飾、搬出といったような多彩な機能がどのように入れ替わるのか、その詳細な過程については不明の点が多い。また、槽成熟の開始地点であるシス槽がどこからどのように形成されるのかについてもよく分かっていない。
本研究では、出芽酵母S. cerevisiaeにおける20種類以上のゴルジ体常在タンパク質群の時空間動態を、我々が開発した高速超解像共焦点レーザー顕微鏡(Super-resolution confocal live imaging microscopy: SCLIM)により観察した。その結果、ゴルジ体シス槽は小胞体-ゴルジ体中間区画(ERGIC)が徐々に成熟することで生まれることが示された。また、シス-トランス槽にかけては、COPI被覆タンパク質や各種糖転移酵素といった様々な機能分子群が個別のタイミングを持って出現・消失し、その後これらはトランスゴルジ網常在タンパク質群へと徐々に入れ替わった。重要なことに、成熟過程の槽内では、前後の画分を構成する分子が空間的に明瞭な区分け(ゾーン)を持って共存していた。
以上のような時空間解析から、ゴルジ体が時間と共にその性質を変えてゆく非常に動的なオルガネラであることが明らかになってきた。本セミナーでは、動物細胞のゴルジ体のSCLIM観察像も併せてご覧いただき、生物種によるゴルジ体機能と構造の多様性と普遍性について議論させて頂きたい。
ポスター
お問い合わせ先
加藤 晃一(生命分子動秩序創発研究グループ)
矢木 宏和(糖鎖構造機能解析グループ)