第38回・第39回 ExCELLSセミナーを開催いたします。
※本セミナーは日本語で実施されます。Seminar Language: Japanese
日時
2024年2月2日(金) 15:00〜17:00
【第38回】 15:00~16:00
【第39回】 16:00~17:00
会場
山手3号館2F西 共通セミナー室
演者・題目
- 【第38回】石谷 太 博士(大阪大学微生物病研究所 教授)
多細胞生命の時間変容を支える未知機構を暴く - 【第39回】荻沼 政之 博士(大阪大学微生物病研究所 助教)
ターコイズキリフィッシュの発生休眠機構の解明
要旨
【第38回】石谷 太 博士
多細胞生命の時間変容を支える未知機構を暴く
多細胞生命は受精してから、発生し、成長し、そして老化して死に至る。私の研究室では、このような生命の一連の時間変化を支える、未知の組織恒常性維持機構を暴き出し、それをヒトのバイオロジーの理解と制御に繋げることを目指している。その実現のために、生命現象に真正面から向き合うことで独自の仮説を立案すること、モデル生物の特徴を最大限に活かした独自のアプローチ、医工学分野との連携、この3つを重視して研究を進めている。本セミナーの前半では、イメージングに適した小型魚類ゼブラフィッシュを利用したin vivo細胞生物学により見出した「化学-力学シグナルの相互変換を介したモルフォゲン勾配の頑強性維持機構」をご紹介したい。また、後半では、新たな老化モデルである超速成長・超速老化魚ターコイズキリフィッシュとマルチオミクス・データ解析を利用した「健康寿命の合成生物学」についてご紹介したい。
【第39回】荻沼 政之 博士
ターコイズキリフィッシュの発生休眠機構の解明
生物の生命活動は一生を通じて、時間の流れに沿って不可逆的に進行する。一方で、一部の生物では生命活動の時間の流れを一時的に休止する現象「休眠」が観察される。ターコイズキリフィッシュはアフリカ原産の卵生メダカであり、短い雨季に一時的に現れる池に生息する。このような特殊な環境下に適応するために、キリフィッシュは胚発生途中で休眠状態に移行し、乾季の6ヶ月もの長期間、状態を安定に維持し、翌年の雨季に正常に胚発生を再開することができる。驚くべき事にこのような休眠を介したとしても、寿命などその後の生命活動には全く影響を与えない事が分かっており、キリフィッシュの休眠は究極の生体保存機構といえる。しかしながら、その分子機構はほとんど明らかになっていない。我々はキリフィッシュの休眠現象を解く鍵は細胞内代謝制御にあると考え、様々な代謝経路を可視化するレポーターキリフィッシュを作製し、休眠時の代謝状態を可視化解析した。その結果、休眠時には胚の細胞内pHが大きく酸性化することを発見し、さらに胚の細胞内pHを人為的に酸性化させると、休眠に似た状態を誘導できることも分かった。つまり、休眠に伴う胚の自発的な細胞内酸性化が細胞内の化学環境を改変し休眠に必要な分子機構を制御する可能性を見いだした。本日は、このような多細胞生物における新しい生命現象であるプログラムされた細胞内酸性化(Programmed Cellular Acidification)を紹介し、それを介した休眠制御メカニズムについて議論したい。
ポスター
お問い合わせ先
高田 慎治(発生シグナル創発研究グループ)