第23回・第24回 ExCELLSセミナーを開催いたします。
日時
2022年11月15日(水) 17:00〜19:00
【第23回】 17:00~18:00
【第24回】 18:00~19:00
開催形式
Zoomオンライン
演者・題目
- 【第23回】沖 真弥 博士(京都大学大学院 医学研究科 特定准教授)
Photo-isolation chemistryによる局所的高深度トランスクリプトーム解析 - 【第24回】小迫 英尊 博士(徳島大学 先端酵素学研究所 教授)
近接ビオチン標識法などの先端プロテオミクス技術による細胞内タンパク質間相互作用の解析
要旨
【第23回】沖 真弥 博士
Photo-isolation chemistryによる局所的高深度トランスクリプトーム解析
多細胞生物の個体は様々な組織や細胞タイプから構成され、その多様性は空間的な遺伝子発現によって規定される。我々は空間的な遺伝子発現を高精細に理解するため、光学と化学を融合した新規ゲノミクス技術、photo-isolation chemistry(PIC)を開発した。これは、興味のあるエリアに特定波長の光を照射すると、その照射領域だけの遺伝子発現プロファイルを引き出せる。これにより、脳やマウス胚における微小組織から、細胞内に存在するサブミクロンレベルの構造体に至るまで、局所的なトランスクリプトーム情報の高深度解析に成功した。また最近、一級アミンを含む溶液で加熱することにより、ホルマリン固定した組織の凍結およびパラフィン切片の解析にも成功した。本技術はあらゆる組織の局所的かつ高深度トランスクリプトーム解析に活用でき、さらに臨床組織の病理診断への応用が期待される。
M. Honda, et al. (2021) Nat Commun. 12(1), 4416.
M. Honda, et al. (2022) STAR Protoc. 3(2), 101346.
【第24回】小迫 英尊 博士
近接ビオチン標識法などの先端プロテオミクス技術による細胞内タンパク質間相互作用の解析
多彩な生命現象の制御機構を理解する上で、細胞内におけるタンパク質間の相互作用を大規模に明らかにすることは重要である。このために、従来より抗体を用いた免疫沈降–質量分析(IP–MS)などが広く行われてきた。我々は高性能質量分析計を用いた相互作用因子の同定に最適化した免疫沈降法と消化ペプチドの調製法を確立し1)、様々な目的タンパク質との新たな相互作用因子を同定してきた。さらにGFPタグやSpotタグに対するアルパカ由来のVHH抗体(nanobody)を用いたIP–MSにより、タグ付きタンパク質との相互作用因子やその翻訳後修飾を効率的に同定することが可能になった。しかしながら、このIP–MS法では抽出液中でも相互作用が維持されている必要があり、非膜オルガネラ中の複合体や酵素–基質間のような一過的な相互作用の検出には適していないという問題があった。
近年開発されたBioIDやAPEXなどの近接ビオチン標識法は、生きた細胞内で直近に位置するタンパク質をビオチン標識することにより、一過的な相互作用因子や動的なオルガネラ構成因子も同定できる強力な技術である。しかし、ビオチン化タンパク質をストレプトアビジンなどで捕捉する従来の方法では、非特異的にプルダウンされるタンパク質も多く、バックグラウンドが高いという問題があった。最近我々は、ビオチンとの可逆的結合能を有する新規アビジン様タンパク質Tamavidin 2-REVを用いることにより、ビオチン化ペプチドを特異的に濃縮・同定する簡便な手法を開発した2,3)。本セミナーでは、IP–MS法や近接ビオチン標識法の概要と共に、これらのプロテオミクス技術で明らかになった自然免疫分子STINGのオルガネラ間輸送機構について紹介したい。
1) 西野耕平 & 小迫英尊 (2022) 日本プロテオーム学会誌. 7(1), 9-14.
2) K. Motani & H. Kosako (2020) J Biol Chem. 295(32), 11174-11183.
3) K. Nishino et al. (2022) J Proteome Res. 21(9), 2094-2103.
ポスター
お問い合わせ先
椎名 伸之(神経分子動態生物学研究グループ)
当日の様子