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2020年11月09日
  • セミナー
2020年度第2ExCELLSセミナー

2020年11月11日(水)に、杉山 博紀 先生(東京大学大学院 総合文化研究科/日本学術振興会 特別研究員(DC1))をお招きし、2020年度第2回ExCELLSセミナーを開催いたします。

日時
2020年11月11日(水) 12:00〜13:00

場所
Zoomオンライン

演者
杉山 博紀 先生
(東京大学大学院 総合文化研究科/日本学術振興会 特別研究員(DC1))

題目
定常流れ場における細胞サイズのリポソームへの非生物的分子濃縮

要旨
リン脂質が水中で成す袋状二分子膜(リポソーム)を細胞様の微小反応場のモデルに見立て、細胞機能を再構成しその反応特性を調べる構成論的研究が注目されている1。再構成した動態の長期的挙動の考究への展開も模索されているが、顕微鏡下でのリポソームの長期動態の観察には人力での絶え間ない追跡が必須であり、計測スループットが極めて低いことがボトルネックとなってきた。発表者らは、マイクロ流体デバイスを基軸として、細胞サイズのリポソームを顕微鏡の一視野内に並列的にアレイ化し、その外溶液を自由度高く交換しながら、化学刺激に曝されたリポソームの動態を長期間・インタラクティブに自動計測できる装置(MANSIONs)2,3を開発してきた。近年発表者らは、MANSIONsを用いた網羅的検討の中で、流れ場に曝されたリポソーム内部に特定の蛍光小分子が自発的に濃縮される新奇現象4を発見した(図)。興味深いことに、蛍光標識されたATPも同様の状況下で細胞サイズのリポソームに濃縮された。一般にリン脂質膜を介した分子の輸送は遅く、リポソーム内部への基質供給は、膜に物理的に細孔を開けるなど受動輸送に依った限定的なものが主流であった。定常流れ場における細胞サイズのリポソームへの分子濃縮現象は、生体膜を介した新奇の輸送動態としてのみならず、区画内部での生体反応を長期間維持する上で必須となる基質輸送の問題を根本から解決しうる要素技術としても注目に値する。

参考文献
1.  Hamada et al., Chem. Commun. 2014, 50 (22), 2958.
2.  Sugiyama et al., MicroTAS 2019, 2019, 356.
3.  Sugiyama et al., ACS Omega 2020, 5 (31), 19429.
4.  Sugiyama, et al., Commun. Chem. 2020, 3 (32).

ポスター

お問い合わせ先
青木 一洋(定量生物学研究グループ)

当日の様子