第42回 ExCELLSセミナーを開催いたします。
※本セミナーは日本語で実施されます。Seminar Language: Japanese
日時
2024年10月11日(金) 16:30〜17:30
開催形式
ハイブリッド
【会場】山手3号館2F西 大会議室
【配信】Zoom ※所内メールでURLをお知らせします
演者
前多 裕介 博士
京都大学大学院工学研究科化学工学専攻 教授
題目
アクティブ流体で解き明かす細胞内対称性の力学的原理
要旨
生命システムは複雑な分子集合体であり、その動作原理の解明は非平衡物理学の中心的課題として活発な研究が進められています。近年では、分子モータータンパク質のように自律的に力を生成する物質群が生み出す構造形成やゆらぎに注目が集まり、その知見から生命現象の理解に迫る機運が高まっています。しかし、細胞内対称性の制御には多くの関連分子が関わるため、細胞そのものを用いて物理的な解析を行うには難しい点が多くあります。我々はこの問題に対して、複雑さを軽減した再構成系による実験を行い、力生成を含むアクティブ流体の力学モデルを解析することで、背後にある対称性制御のメカニズムを明らかにしてきました。これまでに、細胞サイズの油中液滴内にアクチン細胞骨格とミオシン分子モーターと関連因子を含む抽出液を封入することで、アクトミオシンの周期的な波動伝搬が発生すること、アクトミオシンの力の釣り合いが細胞核様体の配置を制御することを見出しました[1,2]。さらに、細胞骨格系の力生成は細胞空間に極性を生み、その力が外環境に伝わることで細胞サイズの液滴が接着分子を介すことなく自発的に細胞運動することを明らかにしました[3]。これは非接着型の細胞運動の再構成系といえます。講演においては、関連する力学の基礎から始め、再構成実験の詳細についてお話しする予定です。
参考文献
[1] R. Sakamoto, et al., Nature Communications, 11, 3063 (2020).
[2] R. Sakamoto, et al., Phys Rev Research, 5, 013208 (2023).
[3] R. Sakamoto, et al., Proc Natl Acad Sci USA, 119, e2121147119 (2022).
ポスター
お問い合わせ先
榎木 亮介(バイオフォトニクス研究グループ)